伝わる文章のコツは「捨てる」こと。想いを1つに絞るライティング術

伝わる文章のコツは「捨てる」こと。想いを1つに絞るから伝わるライティングになる 言葉を磨く

「この記事で、私がお伝えしたいことは『1つのメッセージを伝えるために文章を書け!』ってこと。たったそれだけです。」

いきなり結論から失礼します。でも、本当に伝えたいことは、これだけなんです。

私がたった今書いているブログも、あなたが仕事で送るメールも、好きな人に送るLINEだって、ぜんぶ同じ。 文章が苦手、想いが伝わらない…と悩む人のほとんどは、「伝えたいこと」を詰め込みすぎています。

この記事では、なぜメッセージを1つに絞るべきなのか、そして、その1つのメッセージを相手の脳内で「鮮明な映像」に変えるにはどうすればいいのか。 私が小学生の作文講座でも教えている、ライティングの本質をお話しします。

なぜ、あなたの文章は伝わらないのか?【原因は伝えすぎ】

一生懸命書いたのに、相手に「で、結局何が言いたいの?」と言われてしまった経験はありませんか?

それは、あなたの文章力がないからではありません。 サービス精神が旺盛すぎるだけなんです。

あれも伝えたい、これも知ってほしい。 その親切心が、かえって文章を複雑で分かりにくいものにしてしまっています。

人間の脳は、一度にたくさんの情報を処理するのが苦手です。 レストランのメニューが多すぎると、何を食べたいのか分からなくなってしまうのと同じ。情報の洪水の中で、一番大切なメッセージがぼやけてしまうのです。

メッセージの「主人公」は誰ですか?

良い文章には、必ず「主人公」がいます。 そして、その主人公とは、あなたが「最も伝えたい、たった1つのメッセージ」に他なりません。

あなたの文章に登場する他の言葉たちは、すべて主人公を輝かせるための脇役です。 脇役が目立ちすぎて、主人公の存在感を消してしまっていませんか?

まずは、あなたの文章の主役が誰なのかを、明確に意識することから始めましょう。

ライティングの神髄は「脳内映像化」にある

じゃあ、どうすれば「たった1つのメッセージ」が相手に深く突き刺さるのか。 その答えが、ライティングの考え方にあります。

「ライティングって、なんだか難しそう…」 そう思うかもしれませんね。でも、本質は驚くほどシンプルです。それは、言葉を使って、相手の脳内に「映像」を映し出すこと。 わたしは、文章の本質はこれだと思っています。

例えば、「このリンゴは美味しいです」と伝えるだけでは、相手の心は動きません。

でも、「太陽の光をたっぷり浴びて真っ赤に実った、蜜がたっぷり詰まったリンゴ。シャクッとかじれば、甘酸っぱい果汁がジュワッと口いっぱいに広がります。」

と書けばどうでしょう? あなたの頭の中に、キラキラと輝くリンゴの映像が浮かびませんでしたか?よだれが出てきませんでしたか?(笑)

これが「脳内映像化」の力です。 そして、この映像を鮮明に映し出すためには、伝える情報を「1つ」に絞り、そこに全てのエネルギーを集中させる必要があるのです。

大切なことは「りんご」についてしか語っていなくても、十分りんごが表現できているということです。 むしろ、りんごを表現することに全力を尽くすからこそ、りんごの姿の解像度が上がるのですね。

文章の基本は「捨てる」こと

私たちの頭の中では、たくさんのことが思いめぐらされています。当然、本当は伝えたいこともたくさんあるはずなのです。

でも、しつこいようですが、文章の中で伝えられるのは「1つだけ」です。 多くの伝えたい事柄の中から1つに無理矢理絞ること、つまり、ほかの事柄を「捨てる」ことが原点です。

小学生の読書感想文から学ぶ「捨てる」勇気

小学生の作文を例に考えてみましょう。
「読書感想文を書いて!」というと、多くの子はあらすじを書き、それに沿って自分の感想や考えを書いていく構成を選びがちです。

たしかに、感想文としては正しいのですが、「伝える」ことを考えるなら、それでは不十分。 本を読んで感じた多くの感想や考えの中から、一番印象に残ったことを1つだけ選び、他は捨てる覚悟を持たなければなりません。

そして、選んだ1つの内容を、どんどん具体化していくのです。

  • 主人公と自分の心の動きを重ね合わせる
  • 自分の似たような体験談を語る
  • そこから学んだ自分の価値観を語る

など、あらゆる材料をつかって、ただ一つの感情や出来事を深掘りします。 この「深掘り」こそが、メッセージの「鮮明化」に繋がるのです。

※詳しい読書感想文の書き方は、こちらの記事でお伝えしておりますので、ぜひ覗いてみてくださいね。

小学生も使いこなす!「1メッセージ・ライティング」実践法

「理屈は分かったけど、具体的にどうすればいいの?」 ご安心ください。私が小学生に教えている、とっても簡単な3ステップをご紹介します。

この方法を伝えると、子供たちの作文は驚くほどイキイキと、情景が目に浮かぶように変わるんです。大人なら、もっと簡単に使いこなせてしまうルールです。

STEP1: 今、一番伝えたい「たった1つのこと」を決める

まず、紙とペンを用意してください(スマホのメモでもOK)。 そして、「今、自分が一番伝えたいことは何だろう?」と自分に問いかけ、その答えを1文で書き出します。

  • (例)この商品の素晴らしさを伝えたい!
    → 「この化粧水を使うと、肌が赤ちゃんみたいにモチモチになる」
  • (例)明日の会議の重要性を伝えたい!
    → 「明日の会議の目的は、A案の承認を勝ち取ることだけだ」

たくさん書きたい気持ちをぐっとこらえて、欲張らないこと。これが一番のポイントです。

STEP2: そのメッセージを「鮮明な映像」にする言葉を探す

次に、STEP1で決めた「たった1つのメッセージ」を、相手の五感に訴えかける「映像」に変える言葉を探します。

  • 赤ちゃんみたいにモチモチ
    → どんな手触り?どんな見た目?
    (例)「指が吸い付くような弾力」「お風呂上がりの赤ちゃんのような、みずみずしいハリ」
  • A案の承認を勝ち取る
    → どんな光景?どんな気持ち?
    (例)「部長が大きく頷く姿」「プロジェクトが前進する高揚感」「ライバルのB案に打ち勝つ瞬間」

具体的な単語や比喩(たとえ)を使うと、映像の解像度は一気に上がります。

STEP3: 脇役の文章で「映像」にピントを合わせていく

主役(メッセージ)と演出(映像化する言葉)が決まったら、いよいよ文章全体を組み立てます。 ここで書く文章は、すべて「STEP2で思い描いた映像に、読者のピントを合わせてもらうため」のものです。

  • なぜ、赤ちゃん肌になるのか?(成分の説明)
  • どうして、A案が承認されるべきなのか?(データや根拠)
  • 実際に使った人の声は?(お客様の声)

これらの脇役(補足情報)は、あくまで主役を輝かせるためのもの。決して脇役が目立ちすぎてはいけません。常に「この文章は、主人公の魅力を引き立てているか?」と自問自答しながら書き進めてみてください。

【まとめ】あなたの「たった1つ」の想いを、世界に届けよう

長々とうんぬんかんぬん書いてきましたが、やはり私がお伝えしたいことは、たった1つ。

「1つのメッセージを届けるために、文章を書こう!」

ということです。

文章は、自分の知識をひけらかすためのものではありません。自分の想いを、大切な誰かに「届ける」ための、愛あるツールです。
あなたのその熱い想いを、たった1つのメッセージに込めて、相手の脳内に鮮やかな映像を映し出してあげてください。
きっと、世界はあなたの言葉を待っています。

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